ファッションブランドへの投資と共創
株式会社ファインプレイ
はじまり ― 「5億円ブランドを、世界で育てる」という構想
このプロジェクトは、ある若手デザイナーとの出会いから始まりました。
彼が手がけるブランド「ALLENWOOD」は、ニューヨークの街の空気をまといながらも、
素材・縫製・構成において確かな“日本の手仕事”が息づいているブランドでした。
ただ、当時のALLENWOODは立ち上げ初期の段階。
ブランドの世界観は明確である一方、事業構造や成長シナリオはまだ輪郭が曖昧でした。
私たちは、初回の打ち合わせでこう話しました。
「このブランドを5億円規模まで育てよう。
そのために、クリエイティブだけでなく“資本構造”も設計しよう」
そこから、ALLENWOODの「ブランド × ファイナンス」戦略が動き始めました。
計画の立案 ― 「クリエイティブ」と「経営」を両立させる構想
最初に着手したのは、事業計画の策定でした。
単なる売上予測ではなく、ブランドの成長を資本政策とセットで描く――それがNUJPのスタイルです。
「どの市場で、どんな価格帯で、どんな顧客体験を届けるのか」
「その成長を支えるために、どの段階でどれだけの資本が必要か」
数値の裏には、常に「ブランドとしての矜持」がありました。
ALLENWOODは、ファストファッションのように量で勝負するブランドではなく、
時間と哲学を纏うブランドである。
だからこそ、「文化としての成長曲線」をどう描くかがポイントでした。
5億円という数字は、単なる目標ではなく、「文化が事業として自立するライン」として設定しました。
バリュエーションとMOU ― 成長と独立ができる環境作り
次に行ったのが、バリュエーション(企業価値評価)とMOU(基本合意書)締結の準備です。
ブランド評価は、一般的な損益計算書だけでは測れません。
顧客の熱量、SNS上の反応、製品のリピート率、デザイナーの将来性――
定量化が難しい「ブランドアセット」をどう資本市場の言葉に置き換えるかが、最大のテーマでした。
そのため、私たちはクリエイターとファイナンス担当者の間に立ち、
両者が理解できる「中間言語」をつくるように交渉を進めました。
MOUの締結に至るまで、投資金額・株式比率・優先配当・将来的な持分移転の条件を慎重に設計。
「3年後にはデザイナーがブランドの主導権を取り戻す」
――そんな長期的な信頼関係を前提に、「成長と独立の両立」を目指したスキームを構築しました。
デューデリジェンス ― 曖昧を明確にする、綿密な対話
MOU締結後、すぐにデューデリジェンス(投資前の精査)を実施しました。
ブランドの場合、数字よりも曖昧な部分が多い。
仕入れ契約、在庫回転、SNS運用体制、顧客データの扱い方など――
一つひとつの“曖昧”を丁寧に紐解くプロセスを重ねました。
デューデリジェンスというと「確認作業」のように聞こえますが、
実際はブランドと投資家の信頼関係を築くための対話の場だと考えています。
どんなリスクがあり、どんな強みがあるかを共に見つめ直す。
この過程を経ることで、投資後の数値だけでなく、思想面の整合性も取れていきました。
3ヶ月の交渉期間 ― スピードより、納得を優先
このプロジェクトには、最初の打ち合わせから最終合意までおよそ3ヶ月を要しました。
ファッションブランドへの投資としては、かなり異例のスピードですが、
その間に何度も条件を見直し、意見をぶつけ合いました。
クリエイターとの協業には独特の難しさがあります。
数字で表現できない価値を扱うからこそ、言葉にするたびにズレが生じる。
しかし、そこを丁寧にすり合わせていく過程にこそ、投資の本質があります。
“感性を損なわずに、資本と共に歩む方法を探す”
――それが、私たちが3ヶ月かけてたどり着いた答えでした。
投資の先にあるもの ― 「共創」という新しいブランド経営の形
NUJPの投資は、単なる資金提供ではありません。
投資後も、経営戦略・資本政策・ブランド構築・海外展開の伴走を続けています。
ALLENWOODは今、
国内での販売拡大と並行して、アジア・欧米市場への進出を視野に入れています。
ただ輸出するのではなく、「日本の美意識を世界に翻訳するブランド」として。
資本と感性、財務と哲学――
この両者をつなぐことができた時、ブランドは本当の意味で「事業」になる。
ALLENWOODの挑戦は、その象徴になっていくのだと思います。