事業再建計画の策定支援
国内ベンチャー
はじめに
このプロジェクトは、決して派手な改革ではありませんでした。
けれども、帳簿の整理から始め、経営の基盤を「見える化」することで、企業の再生は確かな形で進んでいきました。
数字を整えることは、経営を立て直すことそのものである――そのことを、改めて実感したプロジェクトでした。
背景 ― 「数字が見えない」という経営の限界
本プロジェクトは、都内で事業を展開する中堅ベンチャー企業とのものでした。
当該企業は、急激な売上減少により資金繰りが厳しくなり、銀行との交渉なども難航している状況でした。
特に中小企業ではよくあることですが、帳簿や決算書が必ずしも整備されていわけではなく、
経営判断の多くは、社長や幹部の長年の経験や勘によって行われており、資金繰り表や収益シミュレーションも十分に管理されていませんでした。
そのため、資金が潤沢な時期には細かな数字を見ずとも意思決定ができていたものの、
一度キャッシュが減り始めると、どこに問題があるのかが見えない――そんな状況に陥っていました。
私たちの役割は、そこから「数字で見える経営」に戻すことでした。
最初の一歩 ― 財務状況の可視化
まず取り掛かったのは、財務状況の可視化でした。
しかし、資料は十分に整理されておらず、決算書も年によってフォーマットが異なる。
そこで、経理担当者やオーナー、顧問税理士など、関係者に一人ひとり丁寧にヒアリングを行い、断片的な情報を集めていきました。
時には、領収書の束やExcelの表から数字を拾い、実態を一本のキャッシュフロー表にまとめ上げる作業も行いました。
このプロセスを通じて、「何にどれだけ使われ、どれだけ残っているのか」を可視化し、ここで初めて経営者の前に会社の現在地が明確な数字として提示することができました。
再建計画の策定 ― 借入と返済の現実的なラインを描く
財務の全体像が見えてきたところで、次に着手したのが再生計画の策定でした。
現状のキャッシュフローと今後の売上予測を照らし合わせ、
「どの時期に、どの程度の借入を行うべきか」「返済計画はどのペースが現実的か」を一緒に検討しました。
銀行との交渉資料もこの段階で作成し、借入後のシミュレーションを複数パターンで提示。
短期的な延命ではなく、中期的な健全化を前提とした融資提案とすることで、金融機関の理解を得ることができました。
コスト構造の見直し ― 「削る」と「残す」の判断
次に行ったのは、コストの棚卸しです。
経費の明細を一つずつ精査し、削減可能な部分を洗い出しました。
当然ながら、人件費や役員報酬の削減といった苦渋の判断も避けられませんでした。
しかし、その必要性をデータに基づいて丁寧に説明し、将来的に経営を持続させるための措置であることを経営陣と共有。
単なる「コストカット」ではなく、「未来に投資するための再配分」という方針を明確にしました。
一方で、売上拡大に直結する領域――例えば営業活動やデジタル化への投資などは、むしろ強化。
「削るところは削り、使うべきところには使う」という選択と集中を徹底しました。
再生の兆し ― 数字が語る経営への転換
計画を実行に移してから数ヶ月後、財務状況は着実に改善していきました。
キャッシュの流れが明確になり、経営層がリアルタイムで資金状況を把握できるようになったことで、
判断のスピードと精度が格段に上がりました。
銀行からの追加融資も無事に実行され、資金繰りの安定化に成功。
経営陣の中でも、「数字を見て意思決定する文化」が少しずつ根づいていったような気がしました。
このプロジェクトを通じて感じたこと
事業再生の本質は、コスト削減でも借入交渉でもなく
経営者が自社の数字を「自分の言葉で語れるようになること」なのではないかと思いました。
私たちはそのための最初の一歩として、財務の可視化から支援を始めました。
数字が整えば、課題は見える。課題が見えれば、判断ができる。
そして、判断ができれば、未来の計画は描ける。
その一歩一歩の積み重ねが、企業の再生につながっていくと強く感じたプロジェクトでした。