東南アジアでの事業拡大に向けた市場調査
大手消費財メーカー
はじまり ― 「成長市場へ、どのように入るべきか」
クライアントは、国内で長年にわたり生活用品を展開している大手消費財メーカーでした。
国内市場が成熟するなかで、経営陣の関心は自然と海外、特に成長著しい東南アジアへと向かっていました。
タイ、ベトナム、インドネシア――人口が増え、可処分所得が伸び、ライフスタイルが急速に変化している地域。
「この市場で、自社の強みをどう活かすか」
その問いに答えるため、私たちNUJPは、現地の生活者のリアルを見に行くリサーチプロジェクトをスタートしました。
調査設計 ― 仮説ドリブンのヒアリング
最初に取り組んだのは、仮説の整理でした。
既存のデータや統計では、購買力や世帯構成の傾向は掴めても、
「実際に人々がどう商品を選び、どう暮らしているのか」は見えてきません。
そこで私たちは、現地での定性調査(フィールドインタビュー)を軸に設計を行いました。
家族構成、住環境、所得、流通経路――どの要素が購買行動に最も影響しているかを、仮説として整理したうえで、
現地でのヒアリング項目を練り上げていきました。
現地へ ― タイ・ベトナムで見た「日用品のリアル」
実際の調査では、チームでタイとベトナムの主要都市・地方都市を回りました。
バンコクでは大型スーパーでの購買行動を観察し、
ハノイやホーチミンでは、街角の小売店や露店、住宅地の市場を歩きながら聞き取りを実施しました。
印象的だったのは、日用品が単なる生活必需品ではなく、
「社会的ステータス」や「暮らしの自己表現」として機能していることでした。
たとえばベトナムの若年層では、SNSを通じて「見せる暮らし」が広がり、
パッケージデザインの美しさやブランドのストーリー性に価値を見出す傾向が強くなっています。
一方、地方都市では依然として価格感度が高く、購買の決定要因は「家族の信頼」や「近所の口コミ」でした。
このように、同じ国の中でも「都市と地方」「世代」ごとに異なる購買心理が見えてきました。
発見 ― データと感覚の交差点で見つけた機会
現地での調査結果を日本側の定量データと突き合わせたところ、
新しいセグメントが浮かび上がりました。
それは「中間層の上位に位置する、 aspirational 消費層」。
価格だけでなく、品質とデザインを同時に重視する層であり、
生活水準の上昇とともに、日本製や日本的な丁寧さに価値を感じている層でもありました。
彼らにとって「日本ブランド」は、高級品ではなく信頼の象徴。
この層に向けた製品開発・販売チャネル設計を行うことが、
今後の事業拡大のカギになると結論づけました。
提言 ― 進出ではなく、「共創」という発想へ
調査の最終報告では、単に「どの国に出るか」だけではなく、
「どの価値観と共に成長していくか」という観点も加えて提案をまとめました。
タイでは現地パートナー企業との協業を軸に、流通とマーケティングをローカライズ。
ベトナムでは、若年層の文化的感度に合わせた商品開発とデジタル施策を提案しました。
単なる市場進出ではなく、日本企業が現地の生活文化を尊重しながら共に育つというモデルです。
現地で感じたこと ― 机上の分析では届かない熱量
現場で印象に残ったのは、
バンコクのスーパーで買い物をしていた母親の言葉でした。
「日本の商品は高いけれど、信頼できる。子どもに使わせても安心だから。」
その一言に、数字では表せない信頼の厚みを感じました。
事業拡大のための市場調査は、データ分析でもアンケートでも行えます。
しかし、本当に企業の意思決定を支えるのは、現地で感じた「生活者の温度」です。
私たちは、今回のプロジェクトを通じて改めて、
「現場を歩かなければ、数字の意味はわからない」ことを痛感しました。
結び ― 「日本の丁寧さ」を、世界の暮らしへ
NUJPの海外市場支援は、単に市場参入ではなく、
「日本の価値観を現地の文脈で再編集すること」を目的としています。
東南アジアの成長は速い。けれど、その中にある暮らしのリズムは一人ひとり違う。
私たちは、その“違い”の中にこそ、日本企業が貢献できる余地があると信じています。